私がもっとも好きな阿波弁は「どちらいか」です。
「いつもお世話になっております」「どちらいか」
「どちらいか」の一言には、
「とんでもございません」「こちらこそお世話になっております」
的な、舌をかみそうな言葉が集約されています。
しかもその一連のやりとりを社交辞令にさせない温かさを含んでいます。おばあちゃんがゆっくりとした発音で「どちらいか」とおっしゃると、ほっこりした気持ちになれるんです!
「どちらいか」を共通語でどう表現するかは、実際に使われる場面によって異なります。方言集を見ると「こちらこそ」と書いてあるのが一番多く、次に「どういたしまして」が多いようですが、実は、どちらも十分ではありません。
ある阿波弁研究家の方は、『この「こちらこそ」と「どういたしまして」の二つを足して二で割って、「なにを おっしゃいますやら」をふりかけると、「どちらいか」になる』と説明されてます。
語源は「どちらへおっしゃることですか?」という気分だそうです。
「誰に向かって、そんな丁寧なことを言うのか」というへりくだりのことばで、「感謝されたものの、私のほうが『ありがとうございます』と言うべきですよ」という感覚です。
ただ、県外の方に使うと「どちらへ行かはるの?」の省略形だと思われて、「はい、今から○○へ行きます」というお返事が・・・(>_<)
県内でも、若い人には通じないことが多くなってきた方言です。
どんな言葉もそうですが、ひとつの言葉が消えていく、ということは、そのことばの持つ「心」が消えていくということ。「どちらいか」が消えつつあるのは、本当に残念です!
「どちらいか」のこころを、「どちらいか」の音感とともに、
残していきたいと願うMAIKOでした。